年中行事をさりげなく取り入れるには
茶道をしていると、季節ごとに違った柄のお茶碗を使い、月々の禅語が書かれた掛け軸を拝見しながらお稽古をします。
年中行事に敏感になる一方で、なぜこんなにたくさんの行事があるのだろうと不思議になります。例えばハロウィンにかぼちゃのオブジェやオバケのケーキを買ってくることはあっても、形だけを取り入れているような気持ちになることがあります。
このコラムでは、それでもおうちに年中行事を取り入れてみようというお話。無理なく、さりげなく取り入れるためには、なぜ年中行事があるのか、それによって何をしているのか、エッセンスを取り出すことが大事です。
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年中行事は昔からあったのか
お正月といえば、我が家はおせち、ではありませんでした。
実家のある東北の地方ではもっと素朴な、しかし母が何日もかけて仕込んでくれた一品料理がたくさん出されたものでした。内容に重なりはあるけれど、それが「おせち料理」という名前で、お重に入っていて、百貨店やコンビニエンスストアで買ってくることのできる料理だと知ったのは大学生になってからでした。
恵方巻なども同様。
ある年の節分に、母が突然大きな太巻きをつくって「これを東を向いて無言で食べると良いらしい」と言い出し、家族で食べたのが始まりです。もっとも、途中で誰かが吹き出して笑い始め、誰も最後まで無言で食べきることはできませんでしたが。
わたしにとっての節分は、神棚と仏壇がある畳の間で、鬼に扮した父めがけて殻付きの落花生を投げ、まだ雪が残る縁側から急いで拾い集めて温かい居間に移り食べる、そういう行事でした。
突然入ってきた恵方巻の行事は、面白かったけれどなんとなく違和感のあるものでした。
一人暮らしを始めて節分の季節になるとそのことを思い出して、コンビニで恵方巻を買ったり、買わなかったりしました。
私事が長くなりましたが、皆さんにはこんな経験はありませんでしたか。
子どものころには毎年やっていたけれど、大人になった自分が特別何かするわけではないもの。
子どものころに毎年やっていたことと、大人になって全国的に行われている行事との内容が違って、正しい方法が分からないもの。
何のためにしているのか、よく分からないもの。
本来、年中行事とは何なのでしょうか。
幼稚園や保育園で子どもたちがお遊戯をしたりものを作ったりするためのものなのでしょうか。七夕の短冊にはどんな意味があり、なぜ短冊を吊るした笹を家に飾るのでしょうか。
年中行事の目的を考える
年中行事は1年をサイクルとして、年ごとに繰り返し行われる行事のことを言います。
小さな村や伝統的な社会ほど宗教的傾向があり、独特の世界観をもつ行事が行われます。同じ集団で生活する人々がつながりを持つために行われたのですから、その地域独自の発展をするのが普通です。
そして、地方ごとに独自の発展をする一方、共通することがあります。
それは「ハレ」の日と「ケ」の日という考え方です。
「ハレ」と「ケ」が生み出す一年のリズム
日本人は長い間、年中行事が行われる日を「ハレの日」とよび「ケの日」と対照させました。そして単調で質素で労苦に満ちたケの日々の間に、労働から離れ、神に奉仕し、大きな消費を伴うハレの日を挿入することによって1年に一定のリズムをつくりあげたとされています。
退屈な毎日を送るなかに、ちょっと特別な日を差し込んで、みんなで飲んで食べて笑い合う、そんな日を意識的に作ってきたのです。
現代のわたしたちと、ほとんど変わらないですね。ちょっとした旅行や誕生日パーティーのようなものですから。
それを、1年を通じたカレンダーに組み込んで、みんなでお祝いしようとしたのが年中行事なのです。
年中行事の役割
そう考えると、わたしたち現代の家族にとって年中行事の役割はシンプルです。
- 家族や大切なひとと過ごす喜びを感じる
- 一年のリズムを作るために行う
- 部屋を飾り付け、美味しいご飯を食べる
ほとんど誕生日パーティーです。
実際、お釈迦様やイエス・キリストの誕生日は年中行事のひとつですから、これを口実にみんなで楽しい時間を過ごしましょうということです。
季節の年中行事を知る楽しみ
由来を知っている年中行事が多いほど、お祝いの口実が増えます。
テーブル茶道のレッスンでは12ヶ月の年中行事を柔軟に取り入れて、季節のテーブルコーディネートをしています。
堅苦しく感じる年中行事も、アレンジ次第ではおうち時間に取り入れやすいものです。
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